当プロジェクトは、2008年のNPO発足と同時にスタートしました。当時、がん医療界における外見ケアへの意識は現在に比べて低く、がんを治療するご本人や周囲の方々の中には「生命が助かったのだから、外見までは・・・」と考える人も少なくなかったと思います。そんななか、キャンサーリボンズは、医療用ウィッグの贈呈や、治療の副作用で外見が変化した時のメイクアップ法の啓発などに取り組んできました。

特に注目されたのが、【看護学生によるヘア・ドネーションと、がん治療中の女性に医療用ウィッグを贈る活動】です。日本におけるヘア・ドネーションの草分けのひとつであり、医療界、NPO、複数の企業(ヘアケア製品メーカー、医療用ウィッグメーカー)、看護学校らが協働する、ユニークで先進的な活動としてメディアにも数多くとりあげられました。

看護学生に「半年間ヘアケアしながら伸ばした髪を、医療用ウィッグのためにご寄付いただく」ヘア・ドネーションに参加してもらうことで、「キレイ」を始めとするQOL(生活の質)支援への若い世代の感性を養い、将来のよりよい療養環境&がんとの共生社会づくりを目指すという、教育的意味合いが高く評価されました。2023年までの15年間で、NPOによる説明会に参加し、課題を共有した看護学生は8734名、うちヘア・ドネーションを行った学生は延べ886名にのぼります。

一方、がん治療中の女性への医療用ウィッグの贈呈については、2020年のコロナ禍以降見送っておりましたが、2024年春、保管していた看護学生さんから寄付された髪を使った医療用ウィッグをがん治療中の女性にお贈りすることができました。結果、医療用ウィッグをお贈りした方は390名となりました。

【看護学生によるヘア・ドネーションと、がん治療中の女性に医療用ウィッグを贈る活動】は、2024年春をもって、終了いたします。この15年間で、ヘア・ドネーション文化は拡がり、医療用ウィッグは企業努力で低価格帯のものが充実し、自治体による補助も進んでまいりました。外見ケア全体についても、学会が「アピアランスケアのガイドライン」づくりに取り組むなど、医療界で重要性が認められるようになりました。それらのことに、当プロジェクトが少しでも貢献できたのだとしたら、大変嬉しく思います。

これまで長い間、たくさんのご支援をいただきました。本当にありがとうございました。

写真で振り返る、「キレイの力」プロジェクト~看護学生によるヘア・ドネーションと、医療用ウィッグ贈呈活動~

  • 学校を訪問して、プロジェクトの説明会を実施。がん体験者の方によるお話も聞いていただきました。
    プロジェクトスタート当初は放課後にお邪魔し、看護学生さんには任意で参加いただいていましたが、その後、プロジェクトの教育的 意義に共感してくださった多くの学校が、授業に取り入れてくださるようになりました。
  • 看護学生さんがヘアケアしながら半年間かけて伸ばした髪を、いよいよカット。
    カットの前に、記念写真をとりました。
    個々人でヘアカットする時は、美容師さんに方法をお伝えするマニュアルを作ってお渡ししました。
  • 美容師を目指す学生さんにヘアカットしていただいた年もありました。
    ヘアカットをご指導くださる先生方はもちろん、若い皆さんの、がん治療している方の気持ちに寄り添おうとする姿勢に感激しました。
  • ヘアカットされ、寄付された髪。
    この後、株式会社スヴェンソンのドイツ工場で、医療用ウィッグに適する髪に加工されます。
  • セミオーダーの医療用ウィッグの中から、お好みのヘアスタイルを選んでいただき、そこに看護学生から寄付された髪を植え込みます。お渡しする前に、再度フィッティングして調整し、贈呈します。写真は、2011年の東日本大震災被災地の病院で活動を行った際のフィッティングの様子。
    この時は、たくさんの医療用ウィッグを載せた車で訪問しました。
  • 初めてのウィッグ贈呈は2009年。その後、多くの女性にお贈りしてきましたが、どの方も、素敵な笑顔を見せてくださいました。ご家族と一緒にこられて、涙される方も。
    写真の前列がウィッグをお贈りした皆さまで、その後、プロジェクトの推進メンバーとして、活動に参加してくださった方もいらっしゃいます。

プロジェクトに参加した学校

大阪警察病院看護専門学校、亀田医療技術専門学校、慶應義塾大学看護医療学部、国立病院機構岩国医療センター附属岩国看護学校、国立病院機構岡山医療センター附属岡山看護助産学校、国立病院機構京都医療センター附属京都看護助産学校、小牧市医師会准看護学校、昭和大学医学部附属看護専門学校、聖マリアンナ医科大学看護専門学校、聖路加看護大学、東京純心大学看護学部看護学科、東都医療大学、八戸学院大学、播磨内陸医務事業組合立播磨看護専門学校、兵庫医療大学看護学部、深谷大里看護専門学校、藤田医科大学看護専門学校、三重大学医学部看護科、横浜実践看護専門学校、横浜市立大学医学部看護学科(五十音順)